【祭祀伝承の形成・古代文学の形成】
時代を遡るほど文学が口頭で語られる傾向が強く、文学の発生もこの口承に基づいております。とくに、「祭祀儀礼(祭り)」の場でうたわれる「歌謡」とそこで語られる説話(神語・伝説)」は、重要です。現在もこのような祭りの現場があるので、それを歴史的、構造的にとらえ、記述しております。その成果の一つが、拙著『沖縄の祭祀伝承の研究―儀礼・神歌・語り―』(2006年・瑞木書房・日本学術振興会出版助成図書)です。
また、このような実証的な成果を踏まえ、これを古代文学に適用して、その本来の意味や発想基盤を探求している。その最近の成果の一つが、拙著『万葉の紫の発想―恋衣の系譜―』(2010年・アーツアンドクラフツ)です。万葉歌の「紫」の歌はすべてが恋情発想を取っております。この「紫」の歌に恋情発想が伴うべき社会的な基盤として、恋する男女が相逢うときに紫の「恋衣」を身に纏う習俗があったことを解き明かし、その基盤から紫の歌に見られるような恋情表現が獲得された経緯を解き明かしています。
また、北東北に分布する山伏神楽(やまぶしかぐら)の本文を収集して原本文を復原し、論評する研究もしております。その最近の成果の一つが、拙論「山伏神楽〈鐘巻〉の復原と鑑賞」(2010年・弘前学院大学文学部紀要46号)です。女人禁制の厳しい鐘巻寺(かねまきてら)に旅の女が参詣して鬼にされる話しで、これを「道成寺」と比較し、ジェンダーの視点から論じました。 |
書名:火の鳥
著者:手塚治虫
出版社:角川書店
『火の鳥』は時空を越えた世界を描いた名作です。古代文学に足場を置いている者として、何度もこの作品を興味深く読み返しております。
T黎明編は、古代の神話・伝承と歴史を自在に組み合わせ、部族社会が次第に国家に統合されていく、いわゆる英雄時代を活写しております。ヒミコ・スサノオ・サルタヒコ・ウズメ・ニニギ・ナギなどの馴染みの神や人が、邪馬台国などに登場します。
Vヤマト編は、古墳建設と殉死、ヤマトタケルの川上タケル討伐などを描きます。
W鳳凰編は、奈良時代の吉備真備(きびのまきび)と橘諸兄(たちばなのもろえ)の権力闘争を背景にして、大仏造営に至る良弁(りょうべん)僧正や仏師たちの愛憎劇が展開します。
こうして、?太陽編下まで人々は運命に激しく翻弄されながらも逞しく生き、その営みを火の鳥が即かず離れず見守っています。あまりに壮大な世界なので、これ以上は紹介しきれないけれども、宇宙の始まり、原始、古代から未来へと時間が無限大に往ったかと思うと戻り、空間も極小から極大まで拡大したかと思うと縮小します。私は、驚嘆しつつ楽しみつつ古代への知識・解釈を膨らませております。
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