【近代史学史、ブルクハルト研究】
19世紀の歴史家ブルクハルトの思想を研究しています。ブルクハルトはスイス連邦のバーゼル大学で歴史学の教師をしていました。彼の生きた時代のヨーロッパは、国家・社会のしくみが大きく変わりつつあったときで、中世以来存続した古い諸制度が廃され、近代的な国民国家が整備されようとしていました。その変動の過程で、今日の社会を成り立たせている概念や制度が確立したのです。たとえば人権や平等という言葉が一般に定着したのもこの頃ですし、また、大学が今日にように科学研究の場となったのもこの時代でした。ブルクハルトは、そういう当時の新しい動きを安易に歓迎したのではなく、歴史的な視点から慎重に吟味していた点において、現代的意義をもっています。彼の思想は、今日の世界を成り立たせている様々な「常識」を批判的に再検討するような視点を私たちに与えてくれるのです。 |
書名:フィレンツェ名門貴族の処世術―リコルディ
著者:グィッチャルディーニ(永井三明訳)
出版社:講談社(講談社学術文庫)
本書は、16世紀イタリアの歴史家グィッチャルディーニが子孫のために書き残した処世術集です。彼はフィレンツェ共和国の外交官、政治家としても活躍しました。スペインやフランスといった大国が台頭するなか、フィレンツェのような小さな共和国は、内外の敵、派閥間の陰謀に悩まされていました。本書にはそのような舵取りの難しい状況をしぶとく生き抜いたイタリア名門貴族の知恵が満載されています。たとえば「君の気が進まない何ごとかを申し入れられた場合、できるかぎり引き延ばすように努力するがよい。四六時中見てのとおり、このようなやっかいから逃れさせてくれるような突発事がおこってくるものだ」というような。ここではきれいごとを抜きにした冷徹で成熟した人間知を堪能することができます。
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