【「地域博物館の理論的展開と実証的研究」「地域社会における社会教育施設の役割」】
博物館とは、資料を収集し、整理・保存し、調査・研究し、展示・教育普及を行うことがその機能とされており、さまざまな種類の資料を国立・公立、そして私立といった設置主体のもと、それぞれの独自の目的・使命を持って運営され、市民の活用を促してきています。その中でも私は、地域社会を舞台に、従来の「展示・教育普及」といった実践を拡張させ、住民の学習・研究活動、ひいては力量形成の場として活動支援を行う博物館を「地域博物館」とし、 その理論的検討と実証研究に取り組んでいます。
理論的検討では、とりわけ明治後期から戦後にかけてわが国の博物館の普及と発展、および法制化に尽力した棚橋源太郎の博物館構想に注目してきました。そして、わが国において小規模博物館特有の理論としての潮流が見られる地域博物館論を実践する、今日の市町村立博物館の活動の検証を進めています。
また、地域住民の学習支援・力量形成を行う場という観点にたつと、それは地域博物館だけではなく、公民館や公立図書館といった施設もまた、地域社会において同様の機能を果たそうとする施設として捉えられてきます。したがってそれらにも視野を広げ、理論的検討およびフィールドワークを行いながら「地域社会教育施設」として探究を深めています。
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書名:『未来をつくる図書館』(岩波新書)
著者:菅谷明子
出版社:岩波書店
公立図書館と言えば、「本を借りる場所」「受験勉強のときに利用した」くらいのイメージでしょうか。
本書は、ニューヨーク公共図書館を舞台にし、図書館が市民ひとりひとりの持つ潜在能力を引き出し、社会を活性化させるのに極めて重要かつ可能性を持つ場であることを、多様な実践を通じて説いています。その実践とは、子どもの放課後事業、失業者を対象としたキャリア支援、高齢者や障害者に対するサービスなど。また収集資料は、図書、事典や統計、地図はもちろん、地域特性を受けて映画・舞台の台本やビデオ、ポスター、さらには政府やNPO、学校、市民団体による冊子やチラシ等も含まれます。そしてデータベースの構築や、ウェブサイトを通じた情報発信、医療や法律、税金といった社会生活上の課題を取り上げた講座の開設により、まさに市民の日常生活には欠かせない「情報センター」「学習センター」の機能が果たされていることが紹介されています。さらにこれらの実践や運営は、専属の司書とともに、ボランティアやドナーにより支えられており、市民の地域参加・社会貢献の場としても存在意義を確立してきています。
近年、日本の公立図書館においても、地域のニーズに即し、地域を支える情報拠点としての活動を実施することが意識されてきています。また日本の場合は、公立図書館だけでなく、公民館や博物館とも機能分化させ、地域社会に暮らす住民の学習活動・社会参加の場としての活動が行われています。本書が、これらの社会教育施設の可能性を理解しつつ、社会生活を切り拓く際にそれらを活用するきっかけとなればと思います。
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