【精神分析学における母子関係論の理論研究】
「教育学は雑学である」(佐伯胖)ことをいいことに、気の向くまま、興味の向くままに研究を続けてきました。これまで特に関心を寄せてきたのがS・フロイトを始めとする精神分析学派の諸理論です。扱ったテーマは、道徳性発達、ケア、人間形成における宗教性の問題など多岐にわたりますが、なかでも人間形成の原基とでも言うべき母子関係の問題を中心に取り組んできました。最近は、日本古来の産育習俗に研究関心がシフトしつつあり、柳田国男を始めとする民俗学の基本文献を手当たり次第、読み進めているところです。 |
書名:『教育人間学のために』
著者:西平直
出版社:東京大学出版会
恩師の著書を紹介するというのは、正直、気恥ずかしくもあるのですが、そうした私的な思い抜きに、本書は教職を志す者に限らず、広く教育に関心のある方にもお薦めしたい一冊です。教育とはそもそも何か ― 本書全体に通底しているのは、こうした素朴かつ原理的な問題意識であり、したがって当然のことながら教育に答えがない以上、本書もまた教育という問いに対して一つの解を提示しているわけではありません。「教育人間学は、教育への一途な期待ではない。むしろ、教育という営みの限界を確認し、その営みの根拠のなさを確かめる。・・・・しかし教育の否定ではない。まして告発ではない。そうではなくて、一度教育への素朴な期待から離れた後に、あらためて教育に出会い直す。そうした反転をうちに秘めた仕掛けである。」(246-247頁)。著者が問題にするのは、答えのない教育という営みをどう見つめ、向き合っていくか、言うなればその見方(見立て方)であり、本書では「生命(いのち)」、「発達」、「死」、「生(性・聖)」等といった様々なテーマから、教育という問題に切り込んでいきます。我々の日常に当たり前のように浸透している教育の原風景を垣間見せてくれる、そんな一冊です。 |