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社会福祉学部専任教員の研究紹介 その4 丸山 龍太 先生

~低所得者に対する支援制度と、制度による支援の限界~    

 社会福祉学部専任教員の研究紹介シリーズとして、第4弾は学部長インタビューでお届けします。
                             報告者 社会福祉学部長 石田 和男

石田: 丸山先生はここ数年、生活保護制度や社会保障に関するテキストを共著で何冊も出されていますね。どんな本を出されていますか。

丸山:2016年度は、塩野敬祐・福田幸夫編『現代社会と福祉第4版』(分担)第3章「福祉制度の発達条件」,弘文堂, 阿部裕二編『社会保障第5版』(分担)第7章「わが国の社会扶助の現状と課題」,弘文堂,伊藤秀一編『低所得者に対する支援と生活保護制度第4版』 (分担)第1章1節B、第4章3・4節・コラム,弘文堂と3冊書かせてもらいました。2018年度は上記の改訂版を書いている所で、年度内に発行予定です。 また、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟編『社会福祉士国家試験模擬問題集2019』,中央法規でも何問か書かせてもらいました。

石田:全国各地の社会福祉士養成校で使用されているテキストの分担執筆を依頼されることはすごいことですね。ところで、丸山先生は実際にどんな内容の研究をされていますか。

丸山: 現在、私が行っています研究は、主に3点あります。1点目は「2010年代の生活保護」と題して歴史的展開をまとめる作業です。これは私の大恩師にあたる小沼正先生が 「1960年代の生活保護」「1970年代の生活保護」と10年単位でまとめられたことを基にしています。私も小沼先生と同じく年代最初の年、今回ですと2020年に発表できるよう作業を進めています。
 2点目は「スティグマ」撲滅に向けた理論構築です。スティグマは「恥」「屈辱」「汚名」「暴力」等と訳され、まったく目には見えませんが、権利として必要な人が受けられる生活保護制度に特に暗い影を落としています。 生活保護を受ける人を非難する、「すみません、すみません」と謝りながら生活保護を受ける、「生活保護だけは嫌だ」と頑なに拒否する等々それらの行為は、スティグマに多大な影響を受けている可能性があります。 スティグマは支援が必要な人を制度から遠ざけ「福祉権(福祉を受ける権利)」を侵害する害悪です。この害悪を滅する具体的な方法を考えています。
 3点目としては、青森県内の市町村で生活保護受給率(保護率)に大きな違いがあるのですが、それを支援する側(各地の市町村の担当部署)はどのように考えておられるのかをアンケートで伺ってみたいと思っております。 また、アンケートでは把握しづらい点については、直接お伺いして情報を伺い市町村ごとの要因の解明に近づきたいと考えています。そのためのアンケート案を作り始めたところです。

石田:私も小さいころに横須賀のキリスト教社会館に通っていて、低所得者の方々が暮らす養護老人ホームに慰問に行ったことがありますので、幼いころからこの分野に触れたこともあり丸山先生の研究に興味があります。 ところで、低所得者支援制度の限界や制度でカバーできない部分へのフォローについてはどのように思われますか。

丸山: 学部長のご指摘は鋭いですね。公助がしっかりしてこそ共助や自助が生きてくるはずですが、現状では公助の足元が揺らぐ中、共助・自助が低所得支援として活発に動いている印象です。 特に共同募金や民間助成団体の助成を受けた市民団体による「子ども食堂」が注目を集めています。低所得世帯の子どもたちへの食の関わりと貧困発見の場という両輪の機能が備わりつつあります。 老若男女が集まり、市民による助け合い活動に熱い視線が注がれ始めています。既に100万人を超える子どもが利用中という調査結果が発表されましたので、今後の発展が楽しみです。 共助・自助の活動が活況となっていますので、国には公助としての「低所得対策」をさらに推進されることを期待したいですね。
 また、私も今年から始めたばかりですが、共助の活動として、秋田県鹿角市の「制服リユース活動」の福祉的効果を探る調査研究をしています。

石田:確かに成長期の子どもの制服は何着あっても足りないし、制服は高額な場合が多く低所得世帯の家計を圧迫しますね。それを緩和するためにリユースがあるというところに目をつけられたのですね。

丸山:そう言ってもらえると嬉しいです。まだ仮説段階ですが、提供される側も誰か次の方に使ってもらえたら嬉しいと思って届けてくださるものと思います。 その意味で、利用者・提供者にとってウィン・ウィンの関係になるのではないかと。低所得者への支援というよりもゴミの減量、エコロジー・人と人の繋がりの構築効果など福祉的にも有用な要素が見出せるものと考えています。

石田:最後に、最近どのような論文をお書きになっておられますか。

丸山:丸山龍太(2016)「2010年代初頭の生活保護」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第16号pp92-101があります。恩師の伊藤秀一先生のお言葉をそのまま引用しますが「慌てず、焦らず、諦めず」論文を書いていきたいと思います。

石田:それでは引き続き頑張ってください。

丸山:ありがとうございました。

 

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