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社会福祉学部専任教員の研究紹介 その3 柘植 秀通 先生

~組織的非営利活動の創始について~    

 社会福祉学部専任教員の研究紹介シリーズとして、第3弾は学部長インタビューでお届けします。
                             報告者 社会福祉学部長 石田 和男

石田: 柘植先生は平成11年から現在まで長らく宗教委員を務め、新入生研修である「リトリート」の学部企画等で活躍頂いており感謝いたします。 柘植先生といえば「キリスト教社会福祉論」の担当の先生というイメージが強いのですが、実際にどんな内容の研究をされていますか。

柘植: 現在、私が行っている研究は、キリスト教会の歴史とも極めて深い関係を持ったものです。キリスト教関係の多くの方が、 日曜学校運動については、ご存知だと思いますが、私が現在研究しております活動は、その日曜学校運動をも、その大きな流れの一部として含む、 18世紀における(ちなみに、日曜学校運動は18世紀末に起こる運動です)博愛事業の中心ともいうべき、慈善学校運動についてのものです。

石田:私もフランス留学経験がありヨーロッパの国々を巡って歩きましたから、イギリスの慈善学校については興味があります。 しかし、学生さんの中にはなじみが少ない方もいるかも知れませんね。

柘植:日本において、慈善学校というものは、あまりお聞きになった方はおられないと思いますが、この慈善学校は、多くの事業の源流となった極めてエポックメーキングな事業です。 先に述べましたように、日曜学校も、実は慈善学校運動の中から出てきたものであり、その創始者である、ロバート・レイクスは、むしろ、日曜学校を慈善学校の中の一つの形態と考えておりました。 また、この事業は、18世紀の博愛事業を特徴づける、会費というシステムを取り入れ、むしろ、それを完成の域にまで押し上げた事業と言えます。

石田:私も「歴史と社会」の講義を受け持っており、慈善学校について歴史的に堀下げて調査されている柘植先生の研究姿勢には、とても親近感が湧きます。

柘植:そう言ってもらえると嬉しいです。何しろ、18世紀の諸博愛事業・慈善事業は、もちろんのこと、19世紀組織的慈善の中心的事業と言われる、慈善組織協会も、会費のシステム、 特に会費を拠出する会員による合議制を基本とし、実務に当たる諸委員会を組織するシステム、また業務の煩雑化を通して、専任の事務官僚を雇用する、 慈善における官僚制の導入など、すべて慈善学校運動の中で構築されてきたシステムをそのまま継承していると言えます。
 すなわち、この事業が、特に運動の中心となったキリスト教知識普及協会(S.P.C.K.)が作り上げた、慈善の組織システムが、18・19世紀の慈善事業のシステムを決定したと言えるのです。 さらには、このシステムは、よく見れば、現在のNPOのシステムさえ決定していると言えます。つまり、日本のNPOもその基本を欧米に範を取っているのですが、その源流がここにあると言えるのです。
 日本においては、会費が運営の基本となるNPOはほとんどありませんが、なお、会費を拠出する会員は、その組織運営の基本となっています。欧米においては、この会費は、NPOの組織運営の基礎的資産となっています。これは現在においても変わらぬ、NPOの根本です。
 このように、現在にまで至るNPO、非営利組織活動の基本となる構造を構築したと言える、慈善学校運動は、しかし、今ではほとんど顧みられることのない過去の記憶となっています。 それゆえ、この慈善学校運動の組織特性を探求し、明確化することにより、現在の博愛事業、さらには現在のNPOのあり方をも考える指針となると考えています。このような観点から、現在も、この慈善学校、特に運動としてイギリス全国にまで慈善学校を広めたS.P.C.K.の組織特性について研究しております。

石田:ところで先生はこれまでの研究成果としてどのような論文をお書きになっておられますか。

柘植: 本学社会福祉学部研究紀要に以下の論文を書いております。柘植秀通(2013)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その1)―研究仮説の設定と組織の特徴について―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第13号pp50-62, 柘植秀通(2014)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その2)―会員および会員のシステムについて―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第14号pp51-60, 柘植秀通(2015)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その3)―慈善学校における規約―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第15号pp62-73, 柘植秀通(2016)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その4)―官僚としての役割を持った職員:書記と執行委員―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第16号pp64-76, 柘植秀通(2017)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その5)―近代性の継承―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第17号pp50-69, 柘植秀通(2018)「英国」慈善学校の組織化特性に関する研究(その6)―情報公開に関する特性―」『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第18号pp49-64です。

石田:引き続き頑張ってください。

柘植:ありがとうございました。

 

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