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社会福祉学部専任教員の研究紹介 その14 駒ヶ嶺裕子 先生

~統合失調症者の自立に関する研究~

 社会福祉学部専任教員の研究紹介シリーズとして、第14弾は学部長インタビューでお届けします。
                             報告者 社会福祉学部長 石田 和男

石田: 駒ケ嶺先生は精神保健福祉(統合失調症者の自立に関する研究)がご専門だと思います。具体的にどのような研究を進められているか教えて頂けますか。

駒ケ嶺: この研究は、統合失調症者の自立を明らかにすることを目的としています。精神疾患の入院患者数は、年々減少しているものの長期入院者数は横ばいで推移しています。 退院後の状況調査では、慢性と急性を繰り返すという統合失調症の特徴があるため、社会復帰するために時間を要しているという結果が得られています。近年、社会福祉関係の法律や障害者関係の著書等に自立というワードが頻繁に出現しています。 しかし当事者が語る自立については、ほとんど無いようでした。このことから本人と家族、支援者が考える自立に相違があると仮説を立て、これを明らかとすることが統合失調症者の支援の一助となるものと考えて研究しています。

石田:先生は実際に医療ソーシャルワーカーの臨床経験がおありになり、その経験を踏まえて研究ならび普段の学生教育にも携わられております。どんな場面での経験を生かされておられますか。

駒ケ嶺:これまで高齢者の在宅支援、障害者入所支援施設、子どもの専門病院において主に相談職として重度心身障害児・者、難病児・者、発達障害児、情緒障害児、精神障害者等と当事者の家族支援をしてきました。 これらの業務経験から介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士の国家資格を取得できるように勉強してスキルアップにも努めました。なかでも、精神障害者との関りについて深く興味をもったきっかけは、当事者とともに遺跡の発掘をしたことでした。 発症前に遺跡の発掘を仕事としていましたが、発症後は療養が中心となったため退職を余儀なくされた方でした。その後は施設で生活をしていましたが、自分の気持ちを他人へ語ることはありませんでした。 家族からの情報として遺跡発掘の仕事を好んでいたということだったので、市の教育委員会へ働きかけて参加することができるようになりました。本人の体調に合わせて参加できない日もありましたが、炎天下にもかかわらず楽しそうに発掘する麦わら帽子の姿がとても印象的でした。 その経験から現在の統合失調症者の自立がテーマとなりました。前任校でも精神保健福祉士の養成に携わっており、主に本人と家族の面談、医療と福祉の多職種連携を実習教育場面に取り入れて実践してきました。

石田: 先生は東北スクールソーシャルワーカー学会の理事を務めておられますが、複雑多様化する現代社会においてスクールソーシャルワーカーの役割についてどのようにお考えになられますか。

駒ケ嶺: 学部長の指摘の通り、子どもたちは、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、ゲーム依存などによる生活習慣の乱れや、SNSによるトラブルなど、複雑多様化する現代社会に翻弄されています。 その背景には、子どもの心の問題や、家庭、友人関係、地域、学校等の環境が影響しており、早急に取り組むべき課題と考えられています。そこでスクールソーシャルワーカーは、社会福祉等の専門的な知識や技術を活用し、 問題を抱えた子どもと、その環境を改善するために働きかけています。その際に学校、関係機関等とチームアプローチをする、またはコーディネーターとしてケース会議を開催するなどの役割があります。主な連携先としては、 学校の他に適応指導教室、家庭相談員、臨床心理士、児童相談所、医療機関、警察関係、司法関係などです。このように多種多様な方法を用いて課題解決のために取り組んでいます。
 学会では、東北におけるスクールソーシャルワーカーの認知度が低いことから教育機関や保護者、関係機関への啓発活動を行っています。またスクールソーシャルワーカーや関係機関を対象としたスキルアップ研修会も開催しています。 主な内容としては、子どもや、家庭、学校等へのアプローチ方法などの講義や演習を行っています。このことから少しずつスクールソーシャルワーカーの認知度が広まってきたように思いますが、都道府県によって差があり未だに発展途上です。

石田:ところで、丸山先生と制服・学用品のリユース活動について社会福祉面から調査研究されていると聞きますが、どのような成果がみられたか教えて頂けませんか。

駒ケ嶺:この調査研究は、NPO法人と行政が共同で開催している子育て応援事業の効果を明かにすることを目的としています。 このリユース事業は、NPO法人が中心となり、子育てが終了した家庭から制服と学用品を譲り受けて、必要な家庭へ無償で提供するという活動です。対象家庭は、A市内に在住の小、中、高校生がいる世帯です。開催数は、年5回(無償譲渡2回、提供3回)であり、衣替えの時期や進級、進学時期と併せて実施しています。この活動について市民の評価は、家計の節約につながること、地域住民間の子育て支援活動につながっていると感じていること、資源の有効活用につながっていることなどが挙げられており制服、学用品の提供者、受け手者に好意的な結果を得ております。このことから本活動の有効性を示唆するものと判断しております。なおこの活動は2年目を迎え、昨年と比較して参加する市民が増えましたが、「必要な方へ周知されていない」という声があるため、地域住民への普及啓発活動をどう工夫するかが課題となっています。

石田:貴重なお話を頂きありがとうございました。最後に、駒ヶ嶺先生の最近の研究成果を教えて頂けますか。

駒ケ嶺: 今までに以下の論文を書いております。
【論文】
1.高齢者ケア従事者のメンタルヘルス(共著、秋田看護福祉大学総合研究所研究所報第8号pp.44-51 2013)
2.重症心身障害児(者)の母親における介護負担軽減の必要性(秋田看護福祉大学総合研究所研究所報第11号pp.35-463.2016)
3.精神障害者の自立認識とその達成要因に関する研究(秋田看護福祉大学総合研究所研究所報12号pp.22-34 2017)
4.統合失調症者の自立の概念に関する研究-自立とその自立達成要因―」(弘前大学地域社会研究科年報第14号 2018)などがあります。

石田:引き続き頑張ってください。

駒ケ嶺:ありがとうございます。

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